婆の家出

さて、出戻りしてみれば、妹たちは実兄の嫁と仲良く暮らしていた。

反対していた身内も誰も何も言わない。

居場所がない婆は家出をする。

が、本当のところ、他にも理由があったようだ。

元々我儘で、子どもの頃から手の付けられない暴れん坊だった婆。

娘らしく育てようと、手習いを一通りさせては見ても、二つ下のサダコに劣ってしまう。

それでも父親は婆を可愛がっていて、手元に起きたがったらしい。

戦時中、母方の親戚がある諫早疎開先には、妹二人を向かわせ、実家には婆を残したほど。

また、伯父は志願兵で海軍飛行隊へ所属するが、一度も戦地へ行かなかったらしい。

当時、伯父は20代前半で、周囲は次々と出兵する中、自分には赤紙が来ないと悩んだという。

勿論、父親は猛反対で、「戦争は、じき終る」と言っていたらしい。

その言葉通り、伯父が志願して一年後、終戦になる。

その終戦間際、祖父は身内に「この数日は、市内へ出るな」と通達したという。

そう、8月9日は長崎に原爆が投下された日である。

この日、祖父の言った通りに市内へ出て行かなかった親戚たちは、誰一人として被害に遭っていないという。

何故、祖父はそんな事を予測できたのか。

まるで、新型爆弾の投下を知っていたかのようである。

そして終戦になり、帰ってきた伯父は長崎にある三菱造船所に就職する。

そう、あの天下の三菱グループである。

伯父が優秀だったから…!?

いいや、それだけが理由で、あの三菱傘下の企業へ就職は出来ない。

他に理由がなければ絶対に不可能だ。

また、サダコ叔母さんの就職先も三菱傘下の子会社が出資する会社である。

そこの事務員ということは、優秀であるからだけではなく、身内である縁故入社だ。

そう、一連の裏には貿易商であった祖父が絡んでいる。

だから縁故入社なのだ。

また、伯母はクリスチャンだ。

その影響でサダコ叔母さんは、伯父同様に教会で洗礼を受けたという。

結婚相手も教会の紹介で見合い結婚だ。

だけど、オリエ叔母さんはそれに反発し、洗礼も受けていないし、恋愛結婚だという。

この中で、一人浮いていたのが婆だ。

そりゃ家出を繰り返すわ...orz